介護業界では、「規制」がますます強まっていることもあり、多くの介護事業所が建物を「建設」して介護事業に取り組んでいます。
(サブリースも含みます。)
すると、借入金の償還までに15年から20年を要する事業ということになります。
すなわち、15年から20年はペイできないわけです。
このことからはっきり言えることは、介護業界は、サービス業ではなく、不動産投資に近い返済期間というわけです。
すなわち、事業展開を行うためには、どんどん借入をして建設を行っていかなくてはならない、ということです。
民間参入が認められた介護保険制度が始まったのは2000年。
現在、2014年ですので、介護保険制度15年目ということになります。
この初期に始めたところで、ようやく15年目ということですので、多くの介護事業所は、まだまだ返済の半分も終わっていないところが大半ということになります。
バランスシートを見ると一目瞭然ですが、利益余剰金が「現金」として溜まっている会社でない限り、理論上、資本金以上のお金が手元に残ることはありませんので、今、いくら手元にキャッシュがあったとしても、それは借入金でしかないわけです。
事業を行うには、事業計画が必要ですが、介護保険制度は3年毎に「単価」はもちろん「ビジネスルール」そのものが変化します。
すなわち、改定が3回も行われる10年後の事業計画なんて、誰も立てることができない、ということでもあるわけです。
そのような「リスク」を抱えながら、多くの介護運営会社が事業を展開していっているのですが、先に述べたように、母体からの出資・外部資本の注入でもない限り、基本的には借入を起こして、建物を建てていくしかないわけです。
すなわち、
資本金/(資本金+借入金)=自己資本比率(ざっと言えば)
という数字ですので、
介護事業を展開すればするほど、自己資本比率は下がってくるわけです。
仮に、資本金が3000万円の会社で、1ヶ所1億円の借入で10事業所を運営する会社の場合、自己資本比率は、
3000万円/(3000万円+10億円)=2.9% となるわけです。
10事業所の展開までには、返済も進みますので、仮に30%を返済したとしても、
3000万円/(3000万円+7億円)=4.1% が自己資本比率となるわけです。
これ、冷静にバランスシートを見ると、けっこう恐ろしいことでもあります。
介護事業とはなんぞや?ということを考えると、介護事業 = 介護サービス業 + 不動産業 と考えるが正しい解釈です。
・介護サービス業 ⇒ 人件費等の介護サービスに使用
・不動産業 ⇒ 建物の償還に使用
このように考えると、デイサービスって、どこで建物代が出るのかな?ということになってきます。
厚生労働省が、デイサービスは利益が出すぎている、という結果をよく出しますが、入居系事業と、通所系事業は、まったく異なった事業モデルであるため、同一の利益率で考えるのは、とてもおかしな話ではあるのですよね。
(訪問系、居宅系は、基本的には、この不動産業の部分がありません。)
さて、前回の介護報酬改定はもちろん、次回の介護報酬改定でも、介護報酬はマイナスの方向に進む予定です。
本日の愛媛新聞で、サービス付き高齢者向け住宅に関するIRCの調査結果が出ていましたが、不動産事業の赤字を、介護サービス業の黒字で補填している場合は、来年の改定以降は、かなり厳しくなってくることが予想されます。
(集中減算はかなり真剣に議論されていますしね。)
そして、松山市では2020年までに、現在の提出計画より、あと140戸が不足という調査結果の中、そんな数字をはるかに超える建設計画が出てきています。
私が以前関わっていた介護会社がありますが、この10年以上、全く事業展開を行っていません。
その結果、どうなるのかというと、あと2、3年で償還が終わり、ものすごく高収益体質の会社へと変貌していきます。
それを踏まえた上で、今、事業展開の計画をスタートさせています。
会社は拡大していかなければならない。
事業を行う以上、経営者が考えるべきことではありますが、「動かない」という選択も、会社の未来を長期にわたってみたときには大切なことだなと。
そして、会社は継続していかなければならない。
高齢者の命と生活を守る事業は、継続し続けなければならない宿命です。
拡大と継続のバランス、本当に難しいことですが、介護事業を、介護サービス業と考えるのか、不動産業と考えるのか、ということは、今後の経営にとって、とても大切なことだと、改めて思いました。
(平成26年8月16日)
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