先日、某介護事業所の運営推進会議で、介護業界でない方から、
「介護業界はどうして人手不足なのか?」
という問いに回答したところ、とてもわかりやすい!と、お褒めの言葉をいただきました。
ので、ちょっと書いておきます。
短時間で説明する便宜上、100%の回答ではありませんので、ご了承ください。
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介護業界の人手不足の大きな理由を一言で言うと、介護業界で働こうと思う人が増えるより、介護施設が増える方が早いから。
ということです。ただ、これだけです。
マスコミが報道するような、きついからだとか、給与が安いからだとかということではありません。
(愛媛という地方経済で考えると、給与は、むしろ少し高い方かもしれません。)
介護施設が急激に増えている理由の最たるものは、サービス付高齢者向け住宅というものの増加です。
これは、国土交通省が推進している住宅で、公共事業の変わりに、この住宅の建築にどんどん助成金をばら撒いているため、あちこちの銀行や、不動産や、建築会社等が、マンション建築より安定とか、相続税対策とかあおって、建てさせているからです。
この住宅の性質上、デイサービスとか訪問介護とかの介護サービスが附随してきますので、建てば建つほど、介護事業所が増えてきます。
介護事業所には、介護保険に基づき「人員基準」というものがあり、どんな職種を何名配置しないといけない、という法律があります。
そのため、住宅が建てば建つほど、介護職員等も必要になってくるわけです。
この速度が速すぎて、追いつかないわけですね。
不思議なことに、介護業界の方は「新しい施設で働きたい!」と考えている人が多いことです。
理由としては、「人間関係のしがらみがない」「自分の思い通りに働ける!」という希望です。
そのため、新規の施設に人は集まりやすくなるのですが、そうすると、既存の施設を退職するため、既存の施設が人不足になるわけですね。
余談ですが、みんながそう思って集まるため、まとまるはずがなく、1年以内に半数以上が退職してしまうのが、一般的な状況ということになります。
さらに、介護業界で働こうと思う人は、以前に比べて減ってきています。
理由はアベノミクスにも関係してきます。
流通業が盛んになり、今、そちらの業界もとても人不足です。
松山周辺でも、某大型商業施設の裏側の仕事の時給は1,000円を越えてきているといいます。
新居浜市なんかはとても大変で、セブンイレブンの四国進出により、工場が建設され、派遣の時給もどんどん上がっています。
こうなってくると、不況なので「介護でもしてみようか」とか「介護ならできそうだ」なんていう、介護への志の低かった方々は、介護ではなく、時給の高い方の仕事を選び始めます。
とくに、そういう男性の方が以前は多かったのですが、最近は本当にみかけなくなりました。
介護の仕事の時給も以前よりはかなり高くなりましたが、他の仕事の方が高くなってきているのですね。
そうすると、以前よりも介護業界で働こうと思う人が減ってくるわけで、さらに供給不足となってくるわけです。
(逆に言えば、現在、新たに介護の世界で働きたいという人は、介護に対する志が高いといえるのかもしれません。)
さらにですが、これは省庁同士の争いが悪いのですが、国土交通省は助成金をばらまいて建築を促進すれば終わりですが、厚生労働省と都道府県、市町村はその後の、併設された介護事業所の介護保険料を、制度が続く限り、永遠に支払い続けていかなければならないわけです。
介護のお金は膨らみ続けるわけですね。
そのため、3年に1回の制度改正の際に、同じことをしていても介護報酬が下がる時代になってきました。
介護職員の給与が少ないと言いながら、3年ごとに売上げを下がられる時代なわけですね。
売上げが下がっても、経費は変わらないので、利益はかなり思いっきり下がります。
しかしながら、その上で、介護職員の給与を上げろ!というムリな要求が来るわけです。
するとどうなるかといいますと、正社員を中心とした職員構成では、事業がまわらなくなってくるわけですね。
そのため、正社員をできるだけ少なくして、パート社員を中心とした職員構成にしていかなければなりません。
実は、大手企業ほど、以前より行っています。
社会保険料や賞与や、重なる時間帯の人件費など、パート社員の活用で削減していかなければならないわけです。
その結果、介護職員の給与を上げる施策が、実は介護職員の給与を下げる事態を生んでいくわけですね。
そうすると、ますます、時給の高くなった他業種の方に魅力を感じてしまうわけです。
以上の理由から、介護業界は人不足の状態になっているわけです。
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こんな感じの回答です。
これで75%ぐらいの回答でしょうか。
あと25%分の回答があるのですが、気になる方は石崎まで。
(平成26年12月16日)
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