メディカサイトでは、毎日、たくさんのご相談をいただいております。
経営面に関して言えば、大きく分けて2つです。
A.経営がしんどいので集客したい、良い人材が欲しい、運営先を探して欲しい。
B.うまく行っていない施設(経営から離脱したい)があれば買い取るので教えて欲しい。
昨年の夏ごろから、B.のご相談がかなり増えてきています。
全国レベルに話を広げますと、先日も大きな話題となった、ワタミの介護さんの身売りや、日本介護福祉グループの売却&買戻しなど、大きな事業レベルでのM&Aも増えてきています。
といっても、こちらは、ここ数年は常に繰り返されていますね。
一部上場まで行っていない上場介護企業は、ほとんど冠が変わってしまっています。
現在もいくつかの大きな介護企業の噂が流れています。
少し前のデータですが、「介護報酬改定前」の介護サービス大手の2015年3月期の上位5社の決算。
ニチイ学館さん
売上高 1486億5800万円 営業損益 118億8600万円
ベネッセさん(介護のみ)
売上高 872億7100万円 営業損益 56億1000万円
メッセージさん
売上高 789億3200万円 営業損益 73億4600万円
ツクイさん
売上高 614億5600万円 営業損益 34億7900万円
ユニマットそよ風さん
売上高 425億3700万円 営業損益 13億6000万円
※経常損益でなく、営業損益です。
これを見て、おぉ!すごい利益を出しているなぁと思う方、次のデータを見てください。
ニチイ学館さん
営業利益率 7.99% 1ヶ月の運転資金(経費) 113億9800万円
ベネッセさん(介護のみ)
営業利益率 6.43% 1ヶ月の運転資金(経費) 68億0500万円
メッセージさん
営業利益率 9.31% 1ヶ月の運転資金(経費) 59億6600万円
ツクイさん
営業利益率 5.66% 1ヶ月の運転資金(経費) 48億3100万円
ユニマットそよ風さん
営業利益率 3.20% 1ヶ月の運転資金(経費) 34億3100万円
ちなみに、上記の多くの介護会社さんは「入居施設」を運営されています。
すなわち、介護報酬以外の「家賃収入」という不動産収入が入っている上での数字となります。
1年間の営業損益と、1ヶ月の運転資金(経費)を比べてみてください。
1年間の時間をかけて、1か月分の運転資金レベルの利益が残っているかどうか。
営業利益率でわかりにくい場合は、この指標がわかりやすいです。
ぜひ、自社の数字と比較してみてください。
通常は、上記の数字からいろいろ操作して経常損益が出てきますが、簡単に言えば、営業損益から、税金を払って、銀行の借入金を返していかなければならないわけです。
この数字がプラスでない限り、資金は常にショートしていくわけです。
(上場企業の場合は、市場からの調達資金がありますので、非上場の介護会社より返済が緩やかですが。その代わりに配当を出す必要もあります。)
基本的に介護報酬は全国どこでも同一です。(地域加算はありますが。)
都会はお家賃が高いのでしょ?と言っても、土地取得費も高いわけで。
(土地は減価償却できませんし。)
結局のところ、規模の大小こそあれ、1事業所、1事業所の利益の積み重ねなわけです。
先日、とある本を読んでいて、気付かされたことですが、
例えば、10店舗あって、そのうち8店舗が黒字、2店舗が赤字だった場合、何店舗の黒字と同じ状況でしょうか?
えぇと、黒字の8店舗から赤字の2店舗を引いて、8−2=6店舗。
そうか、4店舗分が意味がなくなるのか・・・
と考えていたら大間違い!
銀行の借入返済を考えなければなりませんので、実質的に4店舗の黒字店舗と同じ状況。
すなわち、たった2店舗の赤字の結果、6店舗分が意味がなくなる ことになります。
(経営上の話ですが。)
なので、闇雲に展開しているところがすごいのではなく、1店舗1店舗をしっかりと積み重ねていることろがすごいわけなのですね。
逆に言えば、借入金の返済をしっかりと減らしているところは、よりキャッシュが残るため、ダメージも少なくなるわけです。
介護報酬が下がろうと、この借入金の返済をしっかりと減らしているところは、ダメージは少ないわけですね。
企業経営上、ものすごく考えなければならないのは、
・借入金を返すのか?それとも返さないのか?
ということです。
言い換えると、
・借入金残高を減らすのか?増やすのか?
ということでもあります。
いけいけドンドンで展開する場合は、基本的に後者です。
少し展開した後、しっかりと地に足をつける場合は前者です。
うまく回っていない場合も、まずは後者を考えて体制を整えていかなければなりません。
いずれにしろ、どこかでしっかりと向き合わないといけない時期がきます。
このあたりが「経営」の舵取りの難しさともいえます。
小さな企業でも、大きな企業でも、お金がきちんと回っていれば良しで、回らなくなれば倒れるわけです。
(平成27年11月20日)
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