2023.07.14メディカサイトコラム

異端の福祉とは? 採用力を高める異端の取り組み

以前より、

メディカサイトの「障がい版」はされないのですか?

というお声を頂くことが少なくないのですが、私が障がい分野に無知なため、基本的には触れることのない分野です。

にも関わらず、最近、立て続けに様々な障がい分野事業をされている方々のお話を聞かせていただく機会がありました。

 

そして、先日、読了した書籍がこちら↓

異端の福祉 高浜敏之 氏

書籍のタイトルは

・異端の福祉

キャッチフレーズは

・「重度訪問介護」をビジネスにした男
・「福祉は清貧であれ」の業界でタブーに挑む
・”介護=低賃金で過酷な仕事”ではない

の3つです。

先に断っておきますが、高浜社長の「あとがき」にも書かれてある通り、タイトルを含め、これらのキャッチフレーズは編集者が考えられたものです。

著者の目的は、「重度訪問介護」に関する課題を、多くの人に知ってもらうこと、です。

会社のキャッチフレーズは

・優しさを誇らしさに

です。

 

とはいうものの、高浜社長が代表を務められている株式会社土屋(土屋グループ)は、2020年8月に設立され、わずか3年弱で、全都道府県に71ヶ所拠点を構え、従業員は2500人強、売上高50億円超の、尋常ではない超規格外の会社です。(資本金わずか3000万円)

 

これ、どういうこと???

twitterやWEB広告でかなり目立っている会社ということで、以前より興味ありありだったのですが、書籍を通じて、詳しく理解することができました。

株式会社土屋の主な事業は「ホームケア土屋」ブランドで展開されている「重度訪問介護」事業です。

【重度訪問介護】

重度の肢体不自由または重度の知的障害もしくは精神障害があり常に介護を必要とする方に対して、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護、調理、洗濯、掃除などの家事、生活等に関する相談や助言など、生活全般にわたる援助や外出時における移動中の介護を総合的に行います。
このサービスでは、生活全般について介護サービスを手厚く提供することで、常に介護が必要な重い障害がある方でも、在宅での生活が続けられるように支援します。

 

書籍の中やインタビュー記事では、前職を介護ベンチャー企業と書かれておりますが、ユースタイルラボラトリー株式会社の「重度訪問介護」をCOOとして全国に展開されていた方です。

前職の経営陣と話し合いを重ねた上で、スピンオフとしての起業のため、推定ですが初年度で売上高30億円ぐらいからのスタートでしょうか。

とはいうものの、資本金3000万円で、報酬が2ヶ月後という仕組みの中、「初月の人件費だけで2億円」を資金繰りしていくのは、いかに大変だったのかということがわかります。
(このあたりは書籍やインタビュー記事にて)

 

書籍やインタビュー記事では介護サービスとして取り扱われていますが、「重度訪問介護」は、介護保険サービスではなく障害福祉サービスになります。

高齢者分野の介護サービスに慣れていると、この「重度訪問介護」というのは、とても不思議なサービスです。

1人の利用者さんのために、専属のスタッフが、かなり長い時間をかけてケアをしていく形です。

 

土屋総研のデータによると

>「一人当たりの支給時間/月」の平均値が最も多かったのは「東京都(229.3時間=9.6日)」で、最も少なかったのが「茨城県(101.4時間=4.2日)」

埼玉県のデータによると

>1 人当たりの利用時間の上位はさいたま市 439.8 時間、C 市 406.3 時間、AE 市は 140.3 時間であった。

1人のために、これだけの時間が使えるのか!と驚くのですが、利用者さんからすると、1ヶ月は7,200時間もあるのに、利用できるのはたったこれだけ(50~400時間)・・・という感覚になると思います。

 

土屋グループがホームページで公開しているデータを見てみると

2022年のデータでは
総クライアント数667人に対して、従業員数は2,121人

2023年6月のデータでは
総クライアント数1,311人に対して、従業員数は2,516人

つまり、クライアント(利用者)数より、従業員数の方が圧倒的に多いケアの仕組みなのですよね。

3対1や、4対1介護が基本である高齢者介護から見ると、1対2や、1対3の介護が行えるのは、本当に羨ましい仕組みともいえます。

でも、その人らしい「自立した生活」(自立の定義は書籍を参照)を送るためには、全くケアが足りていないのも現状です。

 

現在、高齢者介護の分野では「人不足」に伴う「効率化」が推奨されています。

人員基準の見直しや、介護ロボット(センサー等)の導入など、今後の介護保険制度や介護報酬ではより重要事項となってきます。

しかしながら、介護業界、障がい業界においては、「効率化」は「質の低下」に繋がる危険性が高いです。

「質の低下」を防ぎ、「質を高める」ためには、逆説的ですが「採用力」を高めるしかありません。

人不足が解消できるのであれば、質の高いサービスを提供するために、「効率化」なんて考える必要がない訳です。

書籍の中でも書かれていますが、土屋グループでは、採用にとても力を入れられています。

このような書籍を出版されるのも、採用が主な目的でしょう。

・「重度訪問介護」をビジネスにした男
・「福祉は清貧であれ」の業界でタブーに挑む
・”介護=低賃金で過酷な仕事”ではない

こんなキャッチフレーズを甘んじて受け入れるのも、採用の武器として利用するためでしょう。

書籍にも「給与だけが目当てで福祉の心のない人に来てもらいたくない。しかし、応募が集まらなければ人を選抜することもできない」と書かれています。

圧倒的な採用力。

そのために、どれぐらいブランディング、マーケティングを行っているのか?

SNS等で、どれだけの求人広告が流れているのか?

SNS等で、どれだけの情報発信をしているのか?

「人不足」で悩んでいる事業所は、ぜひ、徹底的に学んで、徹底的にパクって(TTP)みてください。

 

・ベースとしての福祉に対する思い
・きちんと収益を高めるための社内仕組み
・それを維持するための採用力
・そのためのブランディング、マーケティング

民間企業なら当たり前ともいえる取り組み。

当たり前が故に、難しい取り組み。

様々なことが学べる良書でした。

 

今回はコラムというより解説でした。

書籍で「?」と思うことは、ぜひ、この解説と合わせて読んでみてくださいね。

異端の福祉 高浜敏之 氏

 

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