■ 普通に手に入る食材を、いかに美味しくするか。
今回のシェフの伊能さんは、元和食専門の料理人さん。
15年大阪で修行したのち、地元愛媛にUターン。
一度大型店で料理人を勤めるも、料理に対する考え方などに違和感を感じ退職。
以来、介護業界で料理に携わり、一昨年の夏に「かおり」にやってきました。
今日は、週に一度の合同給食の日。
「デイサービスセンター かおり」と「重度認知症デイケア かおりの家」のふたつの事業所で同じ食事を出す日です。 |
|
|
いつもは事業所ごとに別の職員が食事をつくっているのですが、合同給食の日は、伊能さんが代表して両方の事業所の食事をつくります。 |
|
|
「かおり」で仕込みをして、だいたい出来上がったところで「かおりの家」に移動。
行ったり来たりがなかなか大変なので、前日までに器を用意するなどの事前準備が重要になってきます。 |
伊能さんは、もともと料理が大好き。
某有名料理TV番組なども食い入るように観ていた過去があります。
そこで気がついたのが、「いい素材を使って美味しいものを作るのは当たり前。普通に手に入る身近な食材を使って、美味しいものを作ることの方が大切」ということ。
なので、伊能さんのお料理では難しい食材を一切使いません。
身近な食材を美味しくする方法はただ一つ。
「手間をかける」ことです。
伊能さんには、手間暇をかけてお料理を美味しくするノウハウが頭の中に入っています。
などなど、工夫次第で普段の食材がぐんと美味しくなります。
|
|
例えば、今回のお料理であれば、具材を甘めに炊くこと。
ちくわなどの練り物は最後に入れることなどなど。
卵を、「錦糸卵」ではなく「炒り卵」にしたのは、調理機器がIHだから。
合理的に、かつキレイに美味しくできる最善の方法を模索してつくります。 |
■ 人によって味が違うのが料理の面白さ
|
|
伊能さんは、自分で作るだけではなく、スタッフさんへの指導も行っています。
こんな風に、あおぎ方ひとつも熱心に指導します。
手の角度や、速度。
小さなことで味が変わるので、自分の経験を惜しみなく教えてくれます。 |
|
|
とはいえ、伊能さんのやり方を強制することはしません。
「人によって味が違う」のが料理のおもしろいところだと思っているからです。 |
スタッフさんに教え込んでも、うっかり材料の一部を忘れていたり、味付けの仕方が違うことは日常茶飯事。
「あれだけ言ったのに??!」と冗談っぽく突っ込みながら、それぞれがつくりだす料理を楽しんでいます。
「自分が作るものは飽きてくる。人がつくってくれるのが美味しい」と言う伊能さん。
美味しいと思ったものは、「これ、どうやって作ったん?」と逆に尋ねることも。
スタッフさんから学ぶこともたくさんあるとのことでした。
|
|
さて、お料理が仕上がりました。
完成したばら寿司を器に持って、ガリを添えて、8種類の具材が入ったボリューミーな豚汁と、白と緑のコントラストが食欲を誘う白和えを、いただきまーす! |
「伊能さんが来てから、料理が美味しくなった!」と、利用者さんからもスタッフさんからも
大好評。 |
|
|
伊能さんも一緒に食事をとるので、感想をダイレクトに受け取ることができます。
以前は、大きな施設で働いていたため利用者さんの声を聞く機会が全然なかったそう。
声を受け取ることで、「喜んでくれるからまた頑張ろう」と料理のモチベーションにもつながります。 |
|
|
デイサービスセンターかおりはMAX33人、かおりの家はMAX20人。
両方のお料理を作るのは大変な作業ですが、スタッフの負担軽減や、両施設で同じものを食べる連携感が、施設全体のいい空気をつくっています。 |
|
|
2月には巻き寿司や梅煮のイワシなどをつくって節分体験。
時には、和食の料理人らしく、ブリの解体ショーなどをすることも。
伊能さんは、「食」を通じて食べる人の気持ちを明るくさせたり、ホっとさせることに情熱を燃やしている、そんな方でした。 |
|